田川洋行氏「露映画には今後も出演」

ケイリー・ヒロユキ・タガワ(田川洋行)とロシアの俳優イワン・オフロブィスチン(中) =PhotoXPress撮影

ケイリー・ヒロユキ・タガワ(田川洋行)とロシアの俳優イワン・オフロブィスチン(中) =PhotoXPress撮影

エゴール・バラノフ監督のロシアのフィクション映画「イエレイ・サン(司祭さん)」が8月4日、ヤロスラヴリ州でクランクアップ(撮影終了)した。この 映画の主人公は、日本人のロシア正教の聖職者ナカムラ・タクロウ。日本の暴力団に追われてロシアに逃れてきたナカムラの視点から、ロシアの田舎を描く。ナカムラを演じるのは、「ヒマラヤ杉に降る雪」、「ハチ約束の犬」、「サユリ」など、数々のハリウッド映画に出演している、日本生まれ、アメリカ育ちの日本人俳優、ケイリー・ヒロユキ・タガワ(田川洋行)。この映画では、ロシアの俳優イワン・オフロブィスチン、ピョートル・マモノフ、イーゴリ・ジジキン、リュボフィ・トルカリナなどと共演している。「イエレイ・サン」の撮影やロシア正教などについて、田川氏に聞いた。

-なぜハリウッドからロシアに来ることを決めたのですか。

 私のキャリアそのものが一様でないですし、あくまでもハリウッドの日本人男優ですからね。また出演したどの映画にも、互いに共通性はほとんどありませんし。日本の悪党の役ばかり打診されるので、何か新しいものをやってみたいなとずっと思っていました。ですので、ロシアで正教の聖職者の役をやらないかと誘 われて、思わず「私の作品一覧に欠かせない役だ!」と言ってしまいました。

 

-この役はなかなか独特だと思うのですが、演じる上で何が一番難しかったですか。

 正直なところ、相当難しくなるだろうと思っていました。でも実際にやってみると、思ったより簡単でした。特に心配したのが、私と撮影班の言葉の壁です。 想像してみてください。日本人男優が、ロシアの俳優と英語で会話するんですよ。でも私たちはすぐに互いを理解する術を習得しました。撮影一日目が終わった時点で、すべてがうまくいくと感じました。俳優には俳優語という言語があるんです。ここには言葉の壁なんて一切存在しないんです。「イエレイ・サン」で は、献身的に仕事をする、才能豊かな人々と一緒に活動できたので、とても幸せでした。これまで出演したフィクション映画の中で、これは最強の映画だと思います。

 

-イワン・オフロブィスチンとピョートル・マモノフはロシア正教の信奉者ですが、何かを教わりましたか。

 イワンとピョートルの宗教観は私にとても近く、私と同じぐらい宗教に傾倒しています。何世紀もの長き歴史のあるロシア正教の教会は、ただ行ってすぐに理 解できるものではありません。時間の経過とともに、頭ではなく、心でわかってくるのです。ロシアに来た時、速やかに仕事に集中しなければなりませんでし た。ヤロスラヴリやロストフにある教会に行きましたが、そこで見つけた物は私に強い影響を与えています。ロシア人はロシアにあまり魅力を感じていないみたいですが(笑)、私はロシアに強い印象を受けました。

 

-ロシア映画への出演を再度オファーされたら、引き受けますか。

 これは今後続く数多くのロシア映画の、最初の作品だと言っておきましょう。すでにロシア人マネージャーもいますし、将来についてもすでに話をしています。

 

-田川さんは武道家のイメージが強いですが、「イエレイ・サン」でそれをアピールする機会はありましたか。

 皆さんが期待するほどはありません。正直なところ、それほどハマっていたわけじゃないんです(笑)。一番多かったのは、自分の心との闘いという、私の独自のスタイルのアピールでした。私の方法とは、武術を通して人々を治療するものです。そして完全な治癒システムを完成させました。武術を学び始めた時に、 これは自分向きではないと感じました。「モータル・コンバット」のシャン・ツン役や「鉄拳」の平八の役で、尊敬してもらえるのは嬉しいことです。何度も自分のできることをアピールし、自分で技を実践しました。人と闘うよりも人を治療する方が好きです。

 

-聖職者ナカムラは、いつも困難な状況に置かれた人々を助けようとしています。この役で何を見る人に訴えたいですか。

 この映画によって暴力はいけないことなのだと男性に認識してもらえれば。特に女性に対してですね。多くの映画で私は悪党を演じていますが、この映画では 主人公が自分の心の悪魔と闘っています。「イエレイ・サン」を見た後で、自分の心の中を探ってもらえたら嬉しいです。兵士と戦士の間には大きな違いがあるんです。ロシアの男性には、日本の男性と同様、戦いの気質が備わっていると思います。世界には兵士ばかりですが、ロシアと日本はそうではないのです。尊厳と名誉とは、戦い特有の質であり、兵士の世界ではいかなる意味もありません。したがってロシア人男性が本物の男性であることに、尊敬の念を感じます。かといって誰にでも問題はありますから、この映画がその解決のヒントになればと思います。

 

*元記事(露語)kinopoisk.ru

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