WTOとロシアの車

ナタリア・ミハイレンコ

ナタリア・ミハイレンコ

外国メーカー活気

アレクセイ・アクショーノフ、
「BFM」自動車部担当者

ロシアの自動車産業は外国企業の工場が建設され、急速な成長を遂げつつある。その一方で、外国のエンジンが搭載され、外国人がデザインを考案し、ブランド名だけが残るといった具合に面目を失いつつある。

ロシアで「国内自動車産業」という言葉が「アフトワズ(ボルガ自動車工場)」、「ガズ(ゴーリキー自動車工場)」、「ウアズ(ウリヤーノフスク自動車工場)」、「カマズ(カマ自動車工場)」を連想させる時代はとうに過ぎ去った。 今日、ロシアの自動車産業といえば、ロシアに自動車の組み立ておよび生産工場を有する多くの会社のことなのだ。

具体的には、部品の製造を含む本格的な生産に従事する現代(ヒョンデ)やルノーであり、様々な工場ですでに数十のモデルを生産しているゼネラルモーターズであり、ロシアのソルレス社と共同で30万台の車の生産とエンジンの製造を開始する計画のフォードである。

新たなロシアの自動車産業における国家の役割を指摘しないわけにはいかない。保護関税、国家による奨励プログラム、政府決定などにより、事実上、外国の投資家はロシア国内で自動車の生産を組織せざるを得なくなった。

ロシアにおける自動車生産は、中国での生産よりも不利である。中国は労働力がロシアの5分の1と安く、工場の生産力は高い需要が背景にあるためかなり大きい。

ロシアは欧州有数の自動車市場の一つだが、東欧諸国で生産するほうが有利だ。 しかし、高い関税や企業に対する優遇措置が、部分的にそうしたマイナス面を補っている。

しかも、ロシアで自家用車普及率が低いことを考慮すると、2、3年後には、欧州最大の市場になることからロシアでの生産は割に合わない話ではない。

そのうえ、ロシアの世界貿易機関(WTO)加盟によって関税が引き下げられても、外国企業はロシアでの自動車生産による利益を失わない。

向こう数年のうちに、ロシアで自動車生産に従事する会社は追加のメリットを得る。特に、WTO加盟に関する協定が批准されると、ロシアにはいわゆる廃車処理税が導入される。 

これは、ローカルな自動車メーカーおよび純然たる自動車メーカーを欧州の中古車および新車の流入から守るための措置である。

このほか、外国の自動車メーカーにとってロシアは将来的に独立国家共同体(CIS)諸国の市場へ進出する足がかりとなる。現地化率が50%であれば国産車とみなされるので、無税でCISの多くの国へ輸出できるからだ。  ロシアの自動車産業は、外国メーカーの市場参入で激戦の時代を迎えている。こうした中でロシアの世界貿易機関(WTO)加盟が自動車業界にどう影響を及ぼすのかも関心のまととなっている。

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中古輸入より新車

セルゲイ・ウダーロフ、
分析会社アフトスタート 取締役、雑誌『プローフィリ』記者

廃車処理税の導入によって打撃をこうむるのは、関税引き上げ後に大幅に減少した不正輸入車のみである。

産業通商省と経済発展省の予想によれば、基本税率は新車の軽自動車が2万~4万5千ルーブルでトラックが15万~40万ルーブルとなる。

ロシアへ輸入される中古車にも廃車処理税が課されるが、新車の税額を4倍上回る。

私の考えでは、廃車処理税の導入は8月10日のWTOへの加盟に伴う関税引き下げに対する保護措置である。

まず第一に、ロシアの自動車市場をトラックやバスなどの商用車を始めとする中古輸入車から守る狙いがある。

国内において廃車処理制度がどのように創り出されるかは全く分からない。事実上、廃車処理の明確な仕組みはない。経済危機対策プログラムの際にもそうした仕組みは設けられなかった。

世界的水準の自動車産業を構築するためには、市場を中古輸入車から守る必要がある。

WTO加盟国であるドイツを例にとると、そこでは自動車の輸入関税は正に保護のためのものである。

つまり、国の経済の観点からすれば、中古車の輸入に対する制限措置の導入は正しい。中古輸入車に手が届かなくなる消費者の観点からすれば、新制度はもちろんあまり好ましくない。

しかし、将来的には、国内において自動車産業を発展させ、国産および外国ブランドの車を生産し、中古車好きに迎合しないほうが、より重要である。

ここしばらく自動車の価格は変わらないだろう。自動車メーカーの大部分はロシア連邦内に工場を有しており、生産される車が自分たちによって将来必要な際に廃車処理されるという保証を与えるだけでよいわけだ。

そうした廃車処理は、ロシアのWTO加盟によって自動車の輸入関税が引き下げられる前には起こらない。このことはルノーのロガン、現代(ヒョンデ)のソラリス、フォルクスワーゲンのポロといった低価格車にとって現実的である。

もっと高級な車の価格は変わらないだろう。メーカーが廃車処理施設の建造費をカバーするために今から車の価格にその費用を含めることも考えられるが、廃車処理の実際のコストがあいまいなうちはまず起こるまい。

極東においてさえ、関税引き上げ後、中古車の輸入が減り、新車販売の伸び率は100%を上回った。

新車が不足する事態を避けるために極東ではソルレス社によって車の生産が組織された。ほどなく他のメーカーも自社の工場とともに極東に進出するだろう。

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