「機械に油をさせ」

フリー・ジャーナリスト  レオニード・ラジホフスキー

フリー・ジャーナリスト  

レオニード・ラジホフスキー

誰かが奇跡を期待していたとしたら(あるいは恐れていたとしたら)、無駄なことだった。奇跡は起こらず、予想通りの結果となった。プーチンは大統領に選ばれた。さて、この先は?
ロシアが今までのように、濡れ手に粟で、石油・ガスの輸出で儲けられるかどうかは、世界情勢次第だ。

00 年代の好況は、多分にブッシュ元大統領とイラクでの戦争のおかげである。米国は、ロシアの国家予算のためにイランで戦争を始めてくれるだろうか?
ロシアの国家予算は、原油高でないと赤字に転落する。国全体が不労所得を貪り食っているわけだから、汚職対策は、多少なりとも前進するのに必須だ。


国民の分裂
今、ロシア国民はかなりはっきりと二つに分裂している。
あらゆるアンケートの示すところでは、与党を支持しているのは、補助金でやりくりしている民族共和国、公務員、主に 
40 歳以上の女性など、要するに、テレビしか見ない、惰性で投票するノンポリだ。
彼らの「綱領」は単純明快。「内戦にさえならなければ」。「正体不明の悪よりも、おなじみの悪の方がマシだ」。
与党に批判的なのは、「純粋にロシア的」な地方、とくにその大都市の自由業者、若者、 
40 歳未満の男性など。政治的にアクティブな人達で、ネット利用者。思想傾向はナショナリストから親欧米派にいたるまで雑多だ。
ざっとこういう状況で、これからは絶えず、深刻な心理的、社会的危機が到来する恐れがある。

早くも4年後(下院選挙は2016年)には、危機があからさまに政治的なものに変わりうる。

新大統領はこうした展開をいかに避けようとするのか?

締め付けは逆効果
これ以上事態を深刻にしないためには、締め付けを強めるようなことをしてはならない。言論の自由の境界を狭めてはならない。
重要なのは、社会というエレベーターに「油をさし」、その動きをスムーズにすることだ。与党・統一ロシアから共産党まですべての政党の内部に変化が必要だ。
政治エリートたちは、ブレーキにもエンジンにもなりうる。もし彼らが自ら解放されて、公に競争することが当たり前であり、終身ポストなどというものはあってはならぬ、ということを悟るならば、政治と社会のシステムは、根本的に変わるだろう。
そうなれば、「あいつでなきゃ、誰がやるんだ」といったお決まりのボヤキはもう聞こえてこなくなるだろう。そして、大統領の交代が革命や国の崩壊と同一視されるような、終末論的感覚もなくなるだろう。最終的に、選挙は、要するに当たり前の選挙になる。

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