「シアター・ドク」 大小事件の劇化で「世界に肉薄」

演劇「成功した人生」のひとコマ= コメルサント・フォト撮影

演劇「成功した人生」のひとコマ= コメルサント・フォト撮影

モスクワの都心、地下鉄マヤコフスカヤ駅近くにある建物の狭苦しい殺風景な地下室に、モスクワで最も「リアルな」劇場「シアター・ドク」(ドキュメンタリー劇場の意)があり、毎晩 30 人ほどの演劇ファンで埋まる。

 

 ここでは、新しい演劇運動「ニュードラマ」を急展開する若手劇作家、演出家、俳優たちが、劇場名通りにノンフィクションを次々に舞台化している。金銭的支援が一切ないのに、毎週1、2作品という驚異的なペースで新作を上演、存在感を増してきた。

 「シアター・ドク」の名前は、セルゲイ・マグニツキー弁護士の生と死を舞台化したことで、ロシア国外でもよく知られている。

 マグニツキー氏は、税務警察の巨額の税金詐取事件を告発して、当の税務警察に昨年1月逮捕され、刑務所に拘禁中の 
11 月に「膵臓機能不全」で死亡した。

 また、ベスラン学校占拠事件(2004年に北オセチア共和国のベスラン市で発生したテロ事件で、約400人の犠牲者が出た)に対するネット上の反応を題材にし、上演している。

 代表的な演目の一つ「ジーズニ・ウダラス(成功した人生)」をのぞいてみると―。ほとんど何の装飾もない「舞台」で、4人の俳優が台本片手に台詞を朗読している。最前列の観客とは数十センチの距離。しだいに朗読から劇へと移行、俳優たちは若い自堕落な酔っ払いの役に没入していく―。

 この劇は昨年「黄金の仮面」賞を受賞した。「黄金の仮面」は、最新作を紹介するモスクワの代表的シアター・イベント。

自作「混ざった感情」を上演したウクライナ出身の劇作家ナタリア・ボロジビトさんは、「ニュードラマ」運動について、「現代世界に肉薄するため人々を刺激することを恐れず、感情に訴えなければなりません」と述べた。

 

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