モスクワで日本食大流行!

ロシアの子供たちにすしロールの正しい作り方を教える日本人のシェフ=タス通信

ロシアの子供たちにすしロールの正しい作り方を教える日本人のシェフ=タス通信

モスクワではここ 10 年ほどで寿司が大人気となり、1平方キロメートル内に「ヤキトリヤ」「ヤポーシャ」「タヌキ」といった店がひしめく。当地の和食レストランの特徴は?なぜこんなに流行るのか?ロシア人の好みのメニューは?「モスクワ寿司事情」の裏表を知り尽くした古川淳一さん(伊藤忠商事モスクワ事務所食料部長)の話をもとにまとめた。

 ロシアの和食レストランは、寿司屋と居酒屋が中心で、両者の混合タイプも多く、メニューに寿司があれば「スシ・バー」と呼ばれている 。日本のように、ひたすら食事が目的の店(定食屋、そば、ラーメン、牛丼屋など)は発達していない。 

 つまり、当地の和食レストランは、「主に友達同士やカップルで仲 好 く時間をすごすという娯楽性が強いですね」と古川さんは言う。

 ロシア人 
に 人気の寿司ネタは、1.サーモン 2.うなぎ 3.マグロ となっており、概してネタの種類は少ない。日本人の大好きなマグロは、あまり人気がない。 

数字あれこれ

60%

 モスクワの和食レストランの利益のうち寿司とロールが占める割合


1500円

 モスクワの和食レストランでの一人の平均食事代


1990年

 この年初めてモスクワで高級和食レストランが開店。ラディソン・スラビャンスカヤ・ホテル内の 「お相撲さん」だ。開いたのはアレクサンドル・ボルコフ氏。発案したのは和食ファンである、氏の娘だ。氏自ら世界中を回り、和食の品定めをして、モスクワとロンドンに和食レストランチェーンを開いた。ロンドン店も人気で、日本人の評判も上々だ。ボルコフ氏は、ペレストロイカ時代にはプロモーターとして活躍し、1989年に“国民歌手”アーラ・プガチョーワの西ベルリン公演を実現した。


 理由は、「鮮度の高いマグロは高価なため、ロシアでは特別な処理をした安価なマグロを使用しています。これは、残念ながら、美味しくない。 これ が マグロだと思って食べているロシア人は本物の味を知らないわけです」うなぎは、サーモンと同じぐらい人気がある。「特に女性に大人気。あの甘辛いたれが大好きですね」と古川さん 。 、筆者もなるほど 同感 

 ロシア語教師ナジェージダさん( 34 )は、「ロシアでは、新鮮な海産物はあまり食べられません。でも和食ではそれがふんだんに出てきて、しかも醤油の味とすごくマッチしている。エキゾチックで美味しい!」と言う。

アジア・エスニック料理店も兼ねる

 もう一つの特徴は、日本料理店がアジア料理全般のレストランでもあること。ロシアは、他の欧米諸国 と違って、中華料理店 も 韓国料理店 の数 も少なく、 もっぱら 中国人、韓国人を 主な 対象に営業している。 

 しかし、日本食レストランは、ロシア人を対象にしている。ロシア人客 に してみれば、中華料理も韓国料理もタイ料理も試してみたいわけ なの で、実際、和食以外のアジア料理もメニューに含まれている。例えば、タイ料理のトムヤムクン ・ スープはたいていの和食チェーンのメニューにある。

 

フォトドム撮影

フォトドム撮影

日本からの輸入食料品

 2010年に日本から輸入された水産物で日本食といえるのは、ぶり(4600万円)、しめ鯖(数字なし)。他に、海藻類(わかめ、こんぶ、とさかのり等)で、合わせても2~3億円程度。




 それ以外には、農産物を原料とした加工食品が主。醤油、みそ、各種たれ、ソース、ドレッシングなどの調味料のほか、豆腐、麺類等。米はせいぜい10トン程度。金額にして1000万円にもならない。合計金額は、10億円~15億円。したがって、日本から輸入される日本食を全部合計すると、最大でも18億円程度にしかならず、ロシアの日本食市場の約10%。


日本で修業したコックは数人 

 日本人から見て、ロシアの和食レストランの問題点は何か?

 「なんと言っても、本当の日本食を知っている調理人が少ないことです。日本で修 したロシア人調理人は、モスクワにもおそらく5人もいないでしょう。私の知っている限りでは、たったの2人です」。 

 その結果、作れるメニューが限られる。寿司ロールも 「 ヤキトリヤ 」 などの大手チェーンのまねばかり だ 。 

 食材も、日本からの輸入品はごくわずかだ。 また、衛生管理も問題。特に 生 ものを 扱う 料理なので、正しい衛生管理をしないと危険だ。客が食中毒を起こした店がいくつもあると聞いている、と古川さんは言う。

 筆者はだんだん暗 
い気持ちにな ってきた。全体の評価はやっぱり落第点?

日露の味覚に共通点 

 「基本的には、おいしいと思いますよ。ロシア人シェフは正しい味覚感覚を持っているし、ロシア人の味覚は日本人に近いところがあると思う」。 

 まず甘いのが好きなこと。うなぎを好むのも甘い蒲焼ソースのせい。寿司飯も日本の標準よりも甘めに調理しているし、甘酸っぱいガリも 大 好き。 

 醤油も大好き。これはきっと塩辛いのが好きだからではないか。日本食も塩と砂糖を多用する料理だから、日本人の味覚に近いと思われる、とのこ と。

 なるほど、この辺が 大 流行の 理由なのかも 

 古川さんは最後にこう総括してくれた。 


 「ロシア人 の 味覚は優れていると思います。ロシア風創作和食が最近出ていますが、日本の味ではなくても大変美味しく で き てい たりしますから。その意味で、 「 ヤキトリヤ 」 は頑張っていると思います 。メニューのバラエティーという点では、オープンしたばかりのお好み焼きCAFE「OKONOMI」(地下鉄プーシキンスカヤ駅)には期待しています 」。 

 うーん、元気が出てきた。やっぱり今日も和食レストランに行くぞ!

PhotoXpress撮影

PhotoXpress撮影

 モスクワの和食レストランの敷居を初めてまたぐと、思わぬかけ声にぎょっとする。和服姿で、ときには下駄まで履いて大和なでしこを装うのは、たいていは中央アジア出身の娘さんたちだ。

 人気店「ヤポーシャ」の壁には原宿の若者たちの写真が飾られ、チェーン店「二本箸」(ドゥベー・パーロチキ)では何でもペアになっており、トイレまで一室に二つずつある。しかし、たいていの和食レストランは内装もメニューも大体似通っており、値段も比較的安い。どこも寿司、とくにロールが中心。「ヤキトリヤ」などがその代表格で、味にも工夫を凝らして大人気だ。

 和食レストランで寿司をつまむのは、中流のモスクワっ子にとっては日常茶飯事。客のほとんどは得意げにフォークを断る。常連たる者、箸が使えないようではお話にならない。

もっと読む:

至る所 ミニすし店

 伊藤忠商事モスクワ事務所食料部長の古川淳一さんの採点によれば、モスクワのロシア人シェフの和食レストランで一番おいしいのは、「『NETSUKE』のシェフ。名古屋で5年修業されています」。チェーン店では、「いちばんぼし」、「ヤキトリヤ」、「二本箸」、「プラネータ・スシ」、「ヤポーシャ」の順とのこと。「それ以外のチェーン店は、基本的に駄目ですね。おなかこわさないか不安な店もあります」。

 塩漬けニシン、チーズ、燻製の肉など珍しいネタの寿司を頬張りにモスクワに「イラッシャイマセ」んか?

このウェブサイトはクッキーを使用している。詳細は こちらを クリックしてください。

クッキーを受け入れる